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七瀬丸ごと美術館

〈三澤レポート〉
昨年12月15日に、長野市の七瀬丸ごと美術館を見てきました。その日は東御市梅野記念絵画館の運営委員会があり、会議のついでに、まちかど美術館に興味がある私は長野市までちょっと足を伸ばしてみました。七瀬丸ごと美術館は、七瀬地区の住人と長野市立桜ヶ岡中学校美術部の生徒との取り組みです。
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このFAXは櫻ヶ岡中学校の中平先生から頂いたものです。

七瀬商店街は200メートル弱の、うらぶれた、正直、どこが商店街?と言わんばかりの通りでした。かつては長野駅につながるメインストリートとして賑わっていたそうです。
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最初に入ったお店は内山パン店です。
三澤: 「あの〜、中学生が作品を飾っていると聞いてきたんですけどお…、見せて
     もらえますかぁ」

奥さん:「これ、これ、中学生がつくってきたの」

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奥さん:「昨年はね、こんな大きなヒマワリを作ってきてくれたんです。近くから見
     るとわからないんだけど、遠くから見るとヒマワリで、額に入れてね。」

店主: 「バナーで、焼いて、何かかたちをのせて模様をつくってね。そんなのを組
     み合わせて、全体的に見るとヒマワリに見えてね」

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店主: 「毎年、つくった生徒さんたちは、はりあいがあるんじゃないですかねえ。
     学校に置いておくだけじゃなくてねぇ」

奥さん:「また暮れがきたなあと思うし」

三澤: 「お店の方としても待ち遠しいですか?」

奥さん:「今年も来るかなーと思っちゃって」「休みの日はね、外から見えた方がい
     いかなと思って、そこの台(ショウウインドウ)に移して両方からカーテ
     ンを引いてバックにして、そうすると、ちょうどそこに停止線があるから
     車の中からも覗いて行かれるし、いいかなーと思って」

とても楽しそうに話してくれたご主人と奥さん、明らかに年中行事として子どもたちの作品が期待されている感じがしたと共に、生徒の作品が地域の中で評価され、子どもと自身もそのことを誇りに感じているのではないかと思いました。これは教育の評価活動における「社会的評価」と言えるでしょう。私は、評価される場面をつくり出すことも教育の重要な役割だと考えます。



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コンビニエンスストアーでは「笑顔でできたツリー」が飾られて、キャプションに「街の方々が笑顔になってもらえるような作品にしました。」と書かれていました。

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七瀬丸ごと美術館_a0121352_124786.jpgタイトルは「男一筋サンタクロース」思わず笑っちゃうけど、中学生らしいなあ。もともとは隣の喫茶店の入り口に飾る予定だったそうです。それにしても道路に面しての展示はびっくり。








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店先の野沢菜を取り込むおばちゃんとその横の作品(稲田青果)



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地区の自治会長さんの家のポストを使った「トナカイ」
この作品は、もともとは郵便局のポストを使いたいと生徒が希望し、郵便局に掛け合ったそうです。しかし許可が出ず、その話を聞いた自治会長さんが「うちのポストを使ったらいい」と生徒に貸してくれたそうです。



七瀬丸ごと美術館_a0121352_0474291.jpg そば屋「佐々木」のご主人は七瀬通り商店街を『あんどん通り』商店街にしたいと頑張っています。ご主人の背景に写っている屋根付きのあんどんが至る所においたあるのです。そのあんどんには、「交通安全」とか『子どもを守る安心の街』などと書かれ、夜は点灯されているそうです。全てご主人の手作り。交通量の多い通りの安全を願い、また、地域の子どもたちの成長を願っている思いが『あんどん』という形になって、街に置かれているのです。

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最後に、ご主人に取材した内容から、七瀬丸ごと美術館の取り組みをまとめてみたいと思います。ご主人は、勉強は得意じゃなかったけど『図画工作』は得意だったそうです。工作を通して地域作りに貢献できることがうれしいとも話してくれました。もちろん、ご主人も作品を出品しています。

「どうですか、出品されてされて」
「毎年出させてもらっているんですが、たのしいですね」
「昨年はこのウインドウのところにある作品を出したんですが」
と案内をしてくれました。

もともと「七瀬丸ごと美術館」は、この企画は画塾を経営する渡辺さんという女性が企画して、住民や櫻ヶ岡中学校の生徒を巻き込んで展開しているささやかなプロジェクトです。そして、このプロジェクトは、地域の人々がつながり、展示を通して自分たちの住む地区を誇りに思う心が確認しあえる出来事になっている気がするのです。

「美術をすること」が、この様に、自分たちの生活に生きる力になるとするならば、学校教育での「美術」は、たんなる制作を超えて、地域との交流や、美術の果たす社会的機能についても、学習として触れなくてはならないのではないかと感じるのです。本来ならば総合的な学習の役割なのかもしれませんが、でも、今日の社会に必要とされる「ART」の視点から捉え直してみると、美術も大きく関われる内容であり、社会との接点を生み出す取り組みになると感じました。これからの美術教育においては、この様な「社会における美術の働き」を積極的に伝えていく必要があると思うのです。
by tabimusa | 2010-01-02 02:02 | アートプロジェクト | Comments(0)


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