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さくらびに行ってきました〈三澤レポート〉

 8月29日、長野アートプロジェクトの一つ、長野市立桜ヶ岡中学校で開催された「さくらびアートプロジェクト2009」に行ってきました.
今回の「さくらび」は建て替えのため壊される校舎を使ってダイナミックに展開されました。武蔵美の学生も出品したり、生徒のサポートにまわったりしながら、さくらびで活動させてもらっています。ある学生は「参加して本当に良かった」「美術教育のとらえ方も広がった」と言っていました。それはきっと、生徒と直に接する中で感じたことなのでしょう。

 同行した田尾先生の、「今まで中平先生の実践は情報として知っていたが、実際来てみたらその本質が理解できた。生徒の成長を促す環境作りだった」という言葉が、今回、レポートを書こうと思ったきっかけです。たぶん、多くの方々に、その事実が伝わっていないだろうと感じたのです。
 今回は、当日の様子を写真と生徒へのインタビューを交えレポートします。たぶん、伝えたい事実の10分の1も伝わらないと思いますが努力をしてみます。説明の足りない分を、参加した学生の書き込み、またこのサイトをご覧いただいた皆様からの書き込みで埋めていただけたら幸いです。また、上記の「さくらびあーとプロジェクト2009」をクリックして、本記事と合わせてご覧下さい。さくらび開催までの過程が詳細に載っています。

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入り口近くの階段。米山冬馬さん(武蔵美)の牛のペイントが我々を迎えてくれました。








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この教室は、生徒の企画を武蔵美の学生が手伝っています。
生徒は「ここまでできると思わなかった」と言っています。イメージは持っているがその手立てを持たない中学生に、制作者としてアドバイスしていきながら完成まで後押ししてたわけです。その結果生徒は「自信がついた」と言っています。我々から見ればたわいもない展示なのですが、中学生にとっては大いなる実験なのでしょう。





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「ムサビる」に出品した大岩さんの巨大黒板消し。ここでも人気者。背負っている男性は東御市梅野記念絵画館の佐藤学芸員。





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選択美術で作成した陶器の数々。展示方の工夫が面白い。このような作品から普段の授業がイメージできます。また、展示の方法は生徒自身が「さくらび」を通して付けてき展示力(伝える力)のような気がします。





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この企画は、階段を滑り台にしたいという男子生徒チーム(野球部中心)の作品です。企画の実現には武蔵美の学生が関わっています。最初、この企画を知ったとき思わず笑ってしまいました。

学生:「一つの事を、いろんなカラーを持っている人が、最後はみんなぴりぴりして
    それぞればらばらな事をするのですが、でも最後は一つの作品になっていく
    事が新鮮だった」 「ほかの作品も見てごらんと言ったんですが、『いや、
    ここにいたいんです』と言って、自分の作った滑り台から離れようとしなく
    て、愛着あるというか、夢が叶ってるのかなって」

生徒に聞いてみました。
三澤:「最初、この企画できると思っていた?」
生徒:「う〜ん、あんまり、よくわかんなかった」「とりあえず土台だけ作ったら形
    が見えてきたんで… これなら行けるかなって思えてきた」
三澤:「スタートするところが難しかったんだね」
生徒:「どうやって、作るかっていうところが…」
三澤:「学生が手伝ってくれたんでしょ」
生徒:「ペイントとか、どうすればうまく行けるかみたいなところを」
三澤:「やる前とやった後で何か変かありましたか?」
生徒:「よく、すごい、ここまでできたなあって」





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ヘアー・メイクアップアーチスト水谷優香さんとサンボの皆さんのプロジェクト。生徒が描いたデザイン画を元に生徒にその髪型になってもらう。そしてヘアーメイクファッションショウを行う。ショウは見逃してしまった…。

このプロデュースに関わっていたデザイナーの太田伸幸さんにインタビュー。

三澤:「どうですか中学生と関わってみて」
太田:「いやー面白いですね。最近の中学生は、なかなか、うまく自分の事を言わな
    いんですけど、でも、今日は、こう、ものができてくると、みんな氷が解け
    て言葉が出てきます」
三澤:「ここでは自分がオープンになれる場を作っているような感じですか?」
太田:「大人がこのような場を作っていないだけで、今回このような場を作ったら子
    どもたちは、どんどん、こう、爆発して、面白い事やってくれます。今回も
    すごくそれを感じました」





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地元出身の武蔵美生の作品。
普段と違った教室という展示環境が、作品と展示という関係をあらためて考える機会になったようです。





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「作家さん(クリスパーさん)が描いた作品ですが、スプレーを置いていたら見に来た人がかってに(落書きエリア以外にも)落書きしちゃって…。」と中学生。

個人的にはこのようなストリートペインティングはなじめないのですが、しかし、下の写真と比較して、何が違うのか考えるきっかけになりました。

ものを大切にし命を感じる文化(妖怪を生み出す日本文化)などの日本らしさは、あらためて異文化に接することで浮かび上がってくる。そんなことを考えさせられました。気付かない間に自身に浸みつている気がします。最後は綺麗に飾って葬ってあげたいような気持ちはそこからきているのでしょうか。

生徒は直感的に何かを感じているのでしょう。このペイントは現代的な葬り方なのかもしれません。
こんな教室でギャラリートークしてみたい。生徒はどのような発言をするだろうか。






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隣では、同じようにスプレーを使った生徒作品(太田さん+生徒)が。

三澤:「この作品作ってみてどうでしたか」
生徒:「楽しかった。スプレー使ったり、自由にできたところが」
三澤:「落書きみたいな部屋がある中で、何で落書きにしなかったの?」
生徒:「アートだし、みんなが…、最初は、ただスプレーが使いたいと思ったんです
    けど、なんて言うんだろう・みんなが楽しめる…、自分たちだけでなく、見
    ている人たちが楽しい気持ちになれる絵を作りたかったので」

この生徒のインタビューから、私は、彼女たちは明らかに美術を通して社会とつながろうとしているように感じました。





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櫻ヶ岡中学校を数年前に卒業した武蔵野美術大学1年・新海美穂さんとその同級生の作品。上記のインタビューした生徒さんが、いちばん好きだと言っていた展示。





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光を効果的に使った作品が多かった。


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東京藝術大学のハン・イシュウさんの作品




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制作途中のペットボトル(写真提供 高貫さん)
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「浦島太郎」の物語をテーマに作成した部屋。写真は最後のエリア、さしずめ白い煙がもくもく。時間の流れが白い床にペイントされたメッセージに現れる。

この部屋を手伝った学生にインタビュー
学生:「できるだけ(生徒のアイデアを)引き出そう引き出そうとしていたら、なか
    なか出てこなくて、これ、ほぼ1日でやったんですよ。最後の最後まで悪あ
    がきしてどうにか出させようと思ったんです。でも、もうやばいと思って、
    やり出したらうまく行きだして…。アシスタントとしての自分ではなくて、
    自分がいる事の意味(表現者としての)も主張する事でうまく行く気がして
    、自分も楽しめば、生徒も楽しんでくれるかなと思った。

生徒:「海を表したくて、水を使いたかったんですが、どうしていいかわかんなくて
    、そのきに、『ペットボトルに水を入れて光を当てると綺麗だよ』と言って
    くれて…」「自分たちだけだったら、もしかして水を使う事も、うまく考え
    られなくて使えなかったかもしれないので、使えた事が良かった。」
三澤:「このプロジェクトを始める前と終わったとで何か変かありましたか?」
生徒1:「こういう事は難しいと思ったし、なんか、アイデアが自然と自分でも浮か
     んでくるようになった」
生徒2:「他の人の作品とかも見て、どういう風にしたら綺麗とか、こうすればいい
     とか…面白いなって見れるようになった」
三澤:「やる前よりも美術に対して関心がが持てるようになりましたか?」
生徒1,2:「はい」





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「花降る部屋」
数分ごとに照明が点灯し、天井に吊された傘が回転して傘の中に入っている花びら(色紙)が舞い落ちる。子どもたちは花びらをすくい上げ天井に向かって投げあげる。





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ながのアートプロジェクトには欠かせない住中浩史さんのフィルムプロジェクト。今回は「光画」。住中さんが中学生にインタビューしシナリオを書き、その中学生が出演する。






「美術党宣言」中平千尋先生の挑戦
今回のさくらびは衆議院選挙前日という事もあり、中平先生は選挙に絡めて美術の大切さを知ってもらうパフォーマンスを実際の選挙同様に展開してきました。作成した「さくらび」のポスターは選挙用のポスターを模し100種類作成。町中のコンビ二など、協力してもらえる場所に展示され、新聞にも掲載されました。また、実際に選挙会場を教室に出現させ、投票箱も設置し見学者が投票できるようにしてありました。また、各政党に質問状を送り、その回答を会場に張り出し、日頃注目を浴びない美術教育を見学者に問う仕掛けが見事でした。問題点を可視化する力が美術(芸術)の果たす重要な役割である事を皆さんに気づかせてくれたのではないでしょうか。

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私のいちばんお気に入りポスター

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投票所に入る人々と、政見放送を見る人(手前)

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投票所前に張り出された選挙ポスター(50パターン)


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投票用紙に記入


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政見放送(You Tubeで「美術党」と入力し検索してみて下さい。9月2日にアップされました。)


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投票会場。床の模様がまた見事。

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投票所のバナーには「美術教育についての考えを6政党に質問させていただきました。各政党にこんな質問をしてみました。 質問1.あなたの政党は美術教育は“必要”、それとも“いらない”? 質問2.“必要”、または“いらない”と答えた理由を教えて下さい。」とその回答が。
回答を読む来場者






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受付の様子。インフルエンザ対策でマスク着用の方が多かった。中平先生の教え子で、丸子修学館高校の小林君も応援に。彼は進学もも決まり、来年から大学でアートマネージメントの勉強をしていくそうだ。また、昨年ながのアートプロジェクトに参加した森教諭は、また有志でアートプロジェクトの開催と教員間のネットワークを作っていきたいと話していた。

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今回の「さくらびアートプロジェクト」は校舎建て替えというまたとないチャンスを生かして活動が展開された。その点、どこでもできる取り組みではない。だからといって、チャンスがあればできるかというと、そうも言えない。

毎年のこのプロジェクトを取材していて感じることは、全て生徒のために行われているというプロジェクトであるということだ。この取り組みを通して生徒の成長が明らかに感じられるのである。だからこそ、学校側の理解、地域住民の応援が得られ、より活動が充実していくのだろう。なにより、日頃の美術の授業が充実して展開されている事が生徒の様子からも感じられる。決して非日常的な特別な取り組みではなく、日常の取り組みの上に成り立ているアートプロジェクトなのである。

同行した田尾先生が生徒に「こんなすてきな教室で授業受けたらどう?」と聞いたそうだ。生徒は「勉強は普通の教室で受けたい」と。ヘアメイクをした生徒も「普段できないからいいんだ」と。そこには、アートの非日常性に価値を見いだし、非日常のアートにふれることで、日常の学校生活や社会を捉えている生徒の姿があった。

私自身生徒へのインタビューを通して、表現によって、自己実現している生徒の姿を目の当たりにし、この経験が彼らの自信につながっている様子が確認できた。同時に、自分の表現を思う存分発揮する場がいかに学校教育に少ないかを感じた。もしかして自分を表せないフラストレーションが極限に達すると非社会化、反社会化する芽が生まれてくるのではないかとも感じた。そのように捉えると、このアートプロジェクトは、特別活動や道徳、総合的な学習と同様に、社会と自己を体験をもとに意識させる新たな取り組みとして位置づけられないだろうか。そもそも美術の表現は、他者や社会無くしては語れないものである。

〈三澤一実〉
by tabimusa | 2009-08-31 02:12 | アートプロジェクト | Comments(0)


武蔵野美術大学の教職課程学生や現役の先生、中学校、小学校を巻き込んで展開しているプロジェクト


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